May 12, 2011
[咲-Saki-]先輩がちっちゃくなっちゃったっす
夢を見ていた。
私の腰よりは少し背丈がある、小さな女の子。
私は彼女のことをよく知っていた。
「先輩?」
「どうした、モモ」
「ちょっとほっぺたつねってください」
そう。これは夢。しゃがんで彼女と視線を合わせて、お願いしてみた。
「……痛いっす」
変なこと言う奴だなあと無邪気に笑ってみせたのは、加治木ゆみ先輩その人だった。
日が傾きかけた屋上で、楽しそうに走り回る先輩。とってもかわいくて、ずっと目で追ってしまう。
あっ、転ぶ……前回り受け身? でもコンクリートじゃ痛いっすよ!
「ゆみちゃん、大丈夫?」
あわわわ私何叫んだっすか。
「おねえちゃん……」
思わず駆け寄って、抱きしめた。
「痛いの痛いの、とーんでけ」
大丈夫かな。ケガとかしてないかな。
「うん、飛んでった」
制服をぱたぱたとはたいてあげる。どうやらケガはないみたい。
……。
今おねえちゃんって呼ばれたっすか。
これは確認しておかなくては。
「ゆみちゃん」
「なあに?」
か、かわいいっすね。
「せ、先輩?」
「何だ? モモ」
……先輩って呼ぶと先輩に戻るっすか。何となくわかってきたかな。
と、下校のチャイムで我に返る。このちっちゃな先輩、一人でいるところを誰かに見つかったら騒ぎになってしまうのでは。帰り道で補導されちゃったりするかも。ここは……私がついていなくては!
最初の関門は校内。先輩が一人に見えてはいけない。私がプラスの気配を出すっすかー。
ギラン。がしがしがしっ。はぁ、見えるように振る舞うって大変っすね。
「おねえちゃん怒ってるの?」
そんな私に手を引かれながら、先輩が不安そうな顔をする。
「ううん、ちょっとがんばってるだけだから気にしないでね」
「?」
私を見つけだしてくれた先輩。いつも気にかけてくれる先輩。先輩に少しでも恩返しできるならこれくらい何でもないっす。
昇降口到着。先輩の靴箱は、と。やっぱり靴も小さくてかわいい。先輩の今の身長だと届かないっすね。
「ありがと、おねえちゃん」
はうう、いちいちかわいいっす。困るっす。
校門到着。ひとまず任務成功っす。さて。
「ゆみちゃん、おうち帰れる?」
「わかんない……かも……」
せせせ先輩お持ち帰り?
「お姉ちゃんのおうち来る?」
「うんっ」
にっこり。こ、これは仕方ないっすね。
先輩と二人の帰り道。ゆみちゃんははしゃいで腕にしがみついたりしてくる。
「んふふー」
「なになに?」
「おねえちゃん大好きっ」
照れるっすー。
「ゆみちゃん、何か食べて帰ろうか」
もう甘やかしちゃう。
「わーい」
天使のほほえみっ。
というわけで、商店街のフルーツパーラーに寄り道することにした。
二人でメニューとにらめっこ。
うーん、どれもおいしそうで迷っちゃう。
「ゆみちゃん、決まった?」
「これがいい」
ゆみちゃんが指さしたのは。
……桃パフェ。
ごつん。ぷしゅうううう。テーブルにぶつけたおでこが痛いっす。それより、私耳まで真っ赤になってるかも。顔を上げられない。でも、今はゆみちゃんだから大丈夫だよね。
がばっ。
さりげなく、さりげなく。
「実はおねえちゃん桃子って名前なんだよ。モモちゃんって呼んでくれる?」
「モモちゃん?」
「はーい」
「わ、ぱへと一緒だ」
「おねえちゃんもびっくり」
「ゆみもびっくり」
二人して、笑い合う。
なるほど、季節のおすすめっすね。
「モモちゃん、決まった?」
「うん」
「すいませーん」
注文を取りに来てくれた店員さんが笑顔だったのは、二人の声がぴったり重なっていたからだろうか。
あ、そうだ。忘れていた。
「先輩、家に連絡入れるのまだっすよね」
「そうだな。今のうちに済ませておこう」
そういって携帯を取りだしててきぱきと電話をするしぐさは、いつもの加治木先輩そのものだ。
ゆみちゃんに、先輩の影が重なる。
「わー」
しばらくぼんやりしていたのかもしれない。現実に呼び戻してくれたのはゆみちゃんの声だった。
「モモちゃんの、赤いねー」
赤いのは私じゃないっすよ。
「ゆみちゃんのもおいしそう」
運ばれてきたのは、桃パフェとプラムパフェ。私の注文したパフェのプラムが、実にみずみずしくておいしそうな赤色なのだ。
「それじゃ」
「いただきまーす」
んん! 酸味と甘みが絶妙で癖になりそうっす。
「おいしー」
またも声がシンクロする。
そしてしばし無言で食べ進める。美味しいは素敵。
と、この辺でゆみちゃんの口の周りをふきふきするタイミングかな。あれ、ゆみちゃんパフェ食べるのうまいっすね。私の出番、なしっすか……。
「モモちゃん、あーん」
「へ?」
「あーん」
ぱくっ。桃のシャーベットの舌触りと口の中に広がる香り。これは美味しい。
よ、よし、私もやってみよう。
「ゆみちゃん、あーん」
ぱくっ。
「おいしーねー」
なんだか楽しい。
また、来たいな。
そんなことをぼんやりと考えながら、きれいに完食。
「ごちそうさまでした」
帰り道。何となくゆっくり帰りたい気分ではあったのだけど、
「ゆみちゃーん」
「はぁーい」
ゆみちゃんが眠そうなのでしっかり手を繋いで早めに帰ることにした。
「モモちゃんの部屋ー」
ゆみちゃん、目が覚めたみたい。
……はっ。私の部屋、今はまずいっす。
「ゆみちゃんちょっと待っててね。ちょっと散らかってるから片付けてくるっす」
ドアの前で引き留めて、片付ける。これは引き出し! こっちはクローゼット! ふう、危ないところだったっす。
「ゆみちゃんお待たせ。どうぞ」
「わー、モモちゃんのベッドー」
ぼふっ、とダイブ。
本当に危なかったっすね。
「あははー」
ごろごろ。足をぱたぱた。そんなに私のベッドを堪能されても照れちゃうよー。
「モモちゃんのにおいー」
うっ。
それはそれとして、確かこの辺に……あった。
「ゆみちゃん、パジャマあるっすよ」
「わ、かわいい」
「私が昔着てたのなんだけどね。サイズ合うかな」
「着てみていい?」
「うん」
おもむろに脱ぎ出すゆみちゃん。ネクタイをゆるめる仕草がかっこいい。って見とれてる場合じゃないっすね。私も着替えちゃおう。
「モモちゃん、ピッタリだよ」
「よかった」
制服をハンガーに掛けて、これでよし。
「電気暗くするっすよー」
「はーい」
二人でベッドに入ったら、ゆみちゃんはすぐに寝息を立て始めた。疲れちゃったのかな。なんだか不思議な一日だったっすね。そんなことを考えつつ、私も眠りに落ちていった。
夢を見ていた。
夢の内容は覚えていない。まだ夢の中にいるのかもしれない。夢の中で夢を見るというのは何かの本で読んだことがあっただろうか。
冷静な思考ができない。
目が覚めてみたら目の前にモモの寝顔があったのだ。
あわてて目を閉じて、ちょっと体をよじってみたのだが、しっかり抱きしめられていて動けない。
「んふふ……ゆみちゃん……」
!
跳ね上がった心臓の鼓動がモモを起こしてしまわないかと真剣に心配した。
夢なら続きを見よう。暖かくて、とても幸せな夢だ。
気がついたら、目の前で加治木先輩が眠っていた。外はもう明るくなってきている。
「先輩」
「ん……モモ……いったい何がどうなってるんだ?」
「ふふ、秘密っす」
「むー」
「先輩」
「ん?」
「もう少しこのままでいてもいいっすか?」
「ああ」
「やったっす」
September 09, 2010
ウィッチたちのデブリーフィング
「よかった。サーニャちゃんもエイラさんも無事に帰ってきました……」
「宮藤!」
倒れそうになった宮藤の身体を抱きしめる。しっかりしろ。やはり無理をしていたな。
「トゥルーデ、宮藤さん!」
「大丈夫だミーナ。魔法力をギリギリまで使った状態で、気力だけで二人の帰還を待っていたんだろう。まったく、しょうがない奴だ」
宮藤は私の腕の中で寝息をたてている。
「バルクホルン大尉、お手伝いしましょうか?」
「このくらいなら一人で大丈夫だ。宮藤のベッドの方を頼みたい」
「わかりました」
ひとまず宮藤を部屋に連れていこう。まったく、こんな小さい身体のどこにあの元気が詰まっているんだか。
「後を頼む」
「わーお姫様だっこだ」
「大尉がやると違和感ないなー」
「シャーリーもしてしてー」
「やだよ暑苦しい」
「えー」
(わたくしが倒れたら坂本少佐もああやって介抱してくださるのかしら)
「ムリダナ」
「!?」
「ん? 何怖い顔してるんだツンツンメガネ」
「あなたには関係ありま……。ご無事で何よりですわ、エイラさん」
「うん、その、アリガトな。ペリーヌ」
ぼそぼそと言葉を残して行ってしまう。
「エイラさん、まさか宇宙線の影響でおかしなことに!?」
「ううん。エイラも本当はペリーヌさんに感謝しているのよ」
「サーニャ、風呂に行こう!」
突然戻ってきたエイラは半ば強引にサーニャを連れ去る。だが、二人がしっかりと握り合う手を見逃すペリーヌではない。
「ホント、よく帰ってきましたわ」
高度10万フィートのミッション。坂本少佐の作戦立案は的確だった。最終的な攻守、エイラと宮藤だけではない。ブースターを使わず、レシプロで限界高度の3万フィートまで彼女たちを打ち上げる任務は、私たち、いわば、ベテラン組に任された。理由はおそらく二つある。一つは、最もバランスを維持するのが難しい打ち上げの第一段階であること。これはもちろん、私たちなら難なくこなせる。もう一つは、魔法力が潤沢な若い世代のウィッチたちにブースター装着の適性があるということだろう。ある程度の余力がなくては不測の事態に対応できない。
余力とはいっても、一旦上昇速度を殺した上でエイラをサーニャの高度まで押し上げるというのはかなりの魔法力を消耗したことだろう。既に基地に帰投するはずのエイラが任務を続行するのも無茶だったが、宮藤の無鉄砲ぶりは昔から変わらない。
「お待たせしました大尉。私のベッドですが準備しました」
なるほど、宮藤は二段ベッドの上か。
「いけませんでしたか?」
「いや、いい判断だ。手間をかけてすまない」
「いいえ」
二段ベッドの下の段を借りて宮藤を寝かせる。と、コートは脱がせておくか。
「これはその辺にかけておいてくれるか」
「大尉のコートでしたね」
「ああ。後で持って戻る」
「他に何かお手伝いできますか?」
「みんなが心配しているだろうから、大したことはなさそうだと伝えてくれ。それと……」宮藤の親友には少々言いにくい話なのだが。「後は私が見ているから、しばらく二人にしてもらえるか」
彼女は何か言いかけたが、そのまま私のわがままを聞いてくれた。
わがままな上官か。我ながら困ったものだ。
「宮藤……」
顔色は悪くない。魔法力切れなら十分な休養をとればすぐに回復する。もっとも、私がジェットストライカーで墜落したときにはひどい顔だったと皆が口を揃えていたが。
確かに、自分が魔法力切れで墜落するとは思ってもいなかった。飛行中に意識は失ったが、飛行訓練の初歩の初歩で叩き込まれる、墜落時の対処を体が覚えていて自然に実行することができたのだろう。訓練は大事だ。
「サーニャちゃん……」
「気がついたのか宮藤?」
「すぅ」
「寝言か」
ふと、周りを見渡してみる。宮藤を連れてきたときには夢中で気がつかなかったが、しっかりと整頓されていて居心地のいい部屋だ。
(フラウももう少し考えてくれればな)
ジークフリート線を思い出してしまう。
ふと、見慣れたコートに目が止まる。私が宮藤に貸していたものだ。物に対して必要以上に感情移入するつもりはないが、おまえが宮藤を無事に連れて帰ってきてくれたのかもしれないな。
無意識に、ハンガーからはずしたコートを抱きしめていた。宮藤の……においがする……。
ちらり、と宮藤の方を伺う。まだ眠っているようだ。
もう少しくらい、かまわないだろう。
頭で考えるわけでもなく、何となくにおいをかいだり、着てみたり。どうでもいいようなことをしばらくしていたような気がする。そのうちに、ふと胸に沸き上がってきたいいようのない不安感――
宮藤がこのまま目を覚まさなかったらどうしよう。
そんなはずはない。そんなことがあるはずはないのだ。わかってはいても、生まれてしまった疑念は簡単に消えてくれない。もう一人の自分が、バルクホルンらしくないじゃないか冷静になれと必死でささやいても、私の心はバランスを失ってしまったかのように大きく揺れていた。
呼吸が苦しい。立っていられない。イスに座って頭を低くする。
こんな時どうすればいい。ミーナ、坂本少佐。宮藤が。宮藤が……。
「顔色が悪いですよバルクホルンさん」
どれくらいそうしていただろう。誰かに呼ばれていることは認識できても内容がわからなかった。
「バルクホルンさん、お水飲めますか?」
「ああ、頼む……」
受け取った水を口に含む。軽い炭酸が気持ちを切り替えてくれたかのように、そのまま飲み干してしまった。
「ふう。ありがとう」
グラスを返すところでようやく目が合った。
「みみみ宮藤!?」
「はい」
「起きあがって平気なのか? 気分は? 痛いところはないか?」
宮藤は、一度に聞かれても困りますよえへへ、なんて言葉を顔に張り付けながら片付けを済ませ、戻ってくると全く問題がないことをアピールしてみせた。
「ふむ」
上官として叱っておくなら今か。あまり好きではないが、宮藤ならしっかり吸収して今後に活かせるだろう。
「バルクホルンさんは大丈夫なんですか?」
「まあ色々とあってな。……気をつけ」
「えっ?」
「気をつけ!」
「はっ!」
「よろしい。休め」
坂本少佐の教育がいいのか、扶桑気質か。基本教練はしっかり身についているようだな。
「大切な話だからしっかり聞くように」
「宮藤、なぜ倒れたかわかっているか」
「はい。魔法力切れで……」
「まるで新兵だな」
「でもバルクホルンさんだって」
「あ、あれは試作機の実験中だったんだ。仕方がない」
思わず目をそらす。
「だが、お前の場合は状況が違う」
「はっ、はい」
「どう違ったのか言ってみろ」
「バルクホルンさんがいませんでした!」
きっぱり言い切るんじゃない。
自分で気付くのが一番なんだが……。
「宮藤」
「はっ……わっ」
有無を言わさず抱きしめる。
そうだ。回りくどいことなんて必要なかったんだ。
「いいか、宮藤」
ゆっくりうなずくのが伝わってくる。
「私たちは家族なんだ。困った時には、助け合えばいい」
こくり。
「あの時、ペリーヌやリネットが一緒にいただろう」
こくり。
「疲れたのなら、肩を貸してもらえばいい」
ふるふる。
「なんだ?」
「でも、バルクホルンさんがいませんでした」
何を言い出すんだ宮藤。
「怖かったんですよ!」
私の胸から離れて向かい合う。
「ストライカーはふわふわしていうこときかないし」
「大気が薄いからな」
「ブースターだって細かいコントロールができないし」
「ウィッチが何を弱気なことを言っている」
それを聞いて、宮藤はぷーっと顔をふくらます。
……くすっ。
「あ、今笑いましたねバルクホルンさん」
「すまん。ダダのこね方がクリスそっくりだったんだ。お詫びというわけではないが、今日はとことん話を聞いてやるぞ」
「えっ、いいんですか?」
「ああ。たまには甘えてもいいんだぞ、芳……」
「芳佳ちゃーん、お茶が入りました」
「リーネちゃん」
「大尉もご一緒にいかがですか?」
「そ、そうだな」
……なんだかタイミングがよすぎるのは気のせいだろうか。
「凄かったんですよ芳佳ちゃん」
「ああ。下からも見えた。噴射光が大きかったので事故ではないかと心配した」
「見えてたんですか」
「ああ、坂本少佐とミーナの実況付きだったからよかったが」
「芳佳ちゃん、急にエイラさんを引っ張り上げて」
「誰かさんはブースターのコントロールが難しいと泣き言を……」
「わーっ、わーっ!」
慌てる宮藤を横目で見てやるとふてくされたような顔つきをしていた。ふふ、おあいこだ。
「でも芳佳ちゃんが無事でよかった。ずっとバルクホルン大尉がつきっきりで看病してくれてたんだよ」
ぶっ。
「ありがとうございます。バルクホルンさん」
そんな無垢な笑顔を向けるんじゃない。
「そういえば大尉、コートが落ちてますよ」
「ビショップ曹長、そ、それはだな……」
「急にどうしたんですか、大尉」
「そうですよ、バルクホルンさん」
(こ、こいつらーっ)
「あー、ベッドの上まで上るのはムリダナ……」
ぼふっ。
「ん……サーニャ? しょうがないわね。狭いけどちゃんとベッドで寝ましょう」
「さーにゃー」
「ふふっ。今日はありがとう、エイラ」
(あとがき)
旬を逃すことに定評のあるMobiusですこんばんは。
ストライクウィッチーズ2 6話凄かったですね。おまえらクラスターロケットやりたかっただけだろって。しかも多段式で、分離後に美しい軌跡を描きながら離れていくウィッチたち。ホント、趣味だねえ。ったくしょうがねえ奴らだぜ。……って言いながらなんか見ててうるうるしてました。こういうのが好きなんだよ、俺は。
さて、6話ではエイラが無茶をしましたが、芳佳も無茶をしていたということで、こんなお話を思いついてみました。夏コミの後って創作意欲の高まりが凄いですよね。そんなこんながあってようやく完成しました。楽しんでいただけたら幸いです。
FAQ
Q.軌道計算しなくていいんですか
A.ウィッチをなんだと思ってやがる
Q.フリーガーハマーは射撃の反動ないんですか?
A.どこ見てんだオマエ
Q.姿勢制御とかどうしてるんですか?
A.あーなたのめーろでぃー
May 13, 2010
睦月日記
私が次期部長に選ばれた。責任重大だが、部のみんなに認めてもらえたということだ。嬉しい。鶴賀学園麻雀部は小規模だが、きっと県予選を見て興味を持ってくれる人もいるはずだ。私には加治木先輩や蒲原先輩と同じ事はできないけど、新入部員が入ってきたらうんと優しくしてあげよう。
「津山、麻雀は時に厳しく指導することも必要だ。お前ならやれる」
加治木先輩はそう励ましてくれたけど。
本当はちょっと、寂しいんです。
県予選が終わって、引退した先輩たちも時々部には顔を出してくれる。こんな時間がずっと続いてほしいと思っていた。
そこに届いたのは、清澄高校麻雀部からの合同合宿のお誘い。
みんな賛成してくれた。
私の渉外初仕事。気持ちを込めて、参加するという返信をしたためる。
慌てる私を、先輩たちはそっと助けてくれた。
合同合宿の日がやってきた。
清澄、風越女子、龍門渕、そして私たち鶴賀、四校が揃った。
実はちょっと嬉しかった。
先輩たちの表情が違うのだ。特に加治木先輩。先輩はこの合宿に特別な意味を見いだしているのだろうか。目つきが現役の頃に戻っている。凛々しくて素敵だ……。
「睦月、この合宿をどうとらえている」
合宿の合間、鶴賀学園の部屋で、私が暇つぶしにプロ麻雀せんべいのカードを並べている時だった。
加治木先輩の声は、時に厳しく、時に優しく響く。
「わ、私は、部員たちの統率能力を、その」
「ああ、そういう考え方もあるな」
お前なら大丈夫だよ。そんなに肩肘張るな。
加治木先輩はそう言ってくれたけど。
「お茶淹れます」
「ありがとう」
先輩は考え事をしているようだったので、邪魔をしないよう湯飲みをそっと置いて戻る。
手ではカードを並べながら、頭では先輩のことを考えていた。
加治木先輩は他人の領域には決して踏み込まない。そしてある意味マイペース。時折見せる表情は、孤高の一匹狼を思わせる。
その加治木先輩が、東横桃子さんといる時だけは違うのだ。
赤くなったり慌てたり。離れているとそわそわしたり。
……そういえば先輩、何だかそわそわしてませんか。
急におかしくなってきた。くす、くすくすくす……。
「ん、どうした津山?」
こらえていたのに気付かれてしまった。
「いえ、なんでも……」
「なんでもないって、笑ってるじゃないか」
そう。普段の先輩ならここまで追求しない。やっぱり、桃子さんのことだったんだ。
「桃子さん帰ってきませんね」
「!」
やっぱり。
心を許すというのは、ああいうことなのだろう。
私もいつか、そんな人と出会うのだろうか。
「津山、誤解があるようだが、私とモモは……」
「おじゃまするし!」
突然部屋に現れたのは、風越の大将。もう一人は背の高い、中堅だったか。
帰り道がわからなくなったらしい。
それからはあっという間だった。
藤田プロが現れて加治木先輩を連れ去り、風越の大将は部屋に戻ってしまい、私達二人が残された。
「小鍛治プロって親しみやすいですよね」
「確か地元のクラブチームで活動してるとか」
「それでいて……いじられキャラなのがかわいいというか」
「うむ。で、藤田プロは嫌い?」
「もうその話は勘弁してください……」
彼女は文堂星夏さん。牌譜では強気の打ち手に見えたが、話してみると控え目でちょっと気弱なところがあって意外だった。プロ麻雀せんべいに関しては別だけれど。
そして、小鍛治プロの大ファン。
この合宿に集まった全員が麻雀好きなのは当然として、プロ麻雀せんべいの話ができる人と出会えるとは思わなかった。
話し込んだらすっかり時間が経ってしまい、今夜は解散することとなった。
「急に押しかけてすみませんでした。楽しかったです」
「いや、私も楽しかったから気にしないで」
「あの、またお話できますよね?」
「うん。まだ合宿はあるからね。それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
しかし、タイミングが悪くその機会は訪れなかった。
早起きして全員が荷物をまとめた。私たち鶴賀は一番遠くから参加しているから、帰るのも一番先になってしまう。
私の手には文堂さんに渡せなかったカードがあった。カードの中の小鍛治プロが何だか残念そうな表情に見えるのが不思議だ。
風越の部屋に行ってみようか。でもまだ寝てるだろうし……。
「よしみんな行くぞワハハー」
……はっ。さすが蒲原先輩、仕切りがうまい。本当は新部長の私がしっかりしないといけないのに。
四人で先に車に乗り込んで、用事があると遅れてくる加治木先輩を待つ。
しばらくして、加治木先輩と一緒に現れたのは、清澄の部長と、風越の部長。
「あっ!」
「どうしたむっきー」
「ちょっと行ってきます!」
車を降りて駆け寄る。直接挨拶したこともないのに不躾だろうか、なんて考えられなかった。風越の部長さんはすぐに気付いて、こちらを向いてくれた。
「これを文堂さんに渡していただけますか?」
「渡せばわかるのね、津山さん?」
私の名前、知っていたんだ。ああ、文堂さんが話していたっけ。確かに、凄い人だ。
「はい。お願いします」
心から頭を下げて、邪魔にならないようそそくさと車に戻る。……よかった。渡せた。
「待たせてすまない」
程なくして加治木先輩が車に乗った。
「津山」
無言でにじり寄る桃子さんをかわしつつ、先輩が声をかけた相手は私だった。
「あれ、小鍛治プロのカードじゃないか? 余りがないとか言ってた」
「そうです」
胸を張って答えることができた。加治木先輩は全てお見通しだ。
「そうか。よかったな」
「はいっ」
「むむむむっちゃん先輩! 加治木先輩! 二人だけで何話してるっすかー!」
○あとがき
「ポニーテールをこんなにないがしろにするアニメは見たことがない」
アニメ放送当時にこんなことを言っていたわけで。
いつかむっきーのSSを書こうと思ってたら、ある日アイデアが降ってきた。これはいけるということで、書き始めた。勢いで書く時はとにかくアウトプットできることをしていく。寝て起きて冷静な頭で推敲して削ればいいという条件付きで。この後始末がまた大変なのだが、思いつく限りはあとのことは考えずにどんどん書く。書く。書く。
眠さもピークを越えて、区切りのいいところを探しつつ、本当に区切りがいいところで寝てしまうと続きが書けなくなる。
推定午前10時。PC前で寝落ち。目が覚めて時計を見たら小一時間経っていて、しかも非常に怖ろしい話なのだが。
右手が動かなくなっていた。
橈骨神経麻痺という症状。
ここで原稿はストップ。
左手だけではタイピングが追いつかないし、今でもそう。
そして思い返してみればわかることが一つ。
睦月のKOI-GOKOROをもてあそんだ罰が当たったのだ。
そういうわけで該当箇所をざっくり削除して書き直したのがこのSSになる。
楽しんでいただけたなら幸い。
校正協力:咲クラスタ某チーム
October 30, 2008
ARIA The Sky Crawlers 予告編
「クイーン、チェック・シックス!」
「見えてる。たいした腕じゃないわね。こっちは任せる」
「アクアマリン了解」
「私は上のをやる」
軽いフェイントであっさりと敵機を引き離して上昇する藍華機。同じ散香なのに違う機体みたいだ。
敵機が慌てて機首を上げる。ここは追撃不可能と判断して自分の身を守る機動に入るべき場面。
「遅い」
こちらに気付いてロールを打った次点で勝敗は決まっていた。
ファイア。
右旋回で離脱。撃ったらすぐに周囲を索敵する。いない。ここで改めてさっきの敵を確認する。主翼にダメージを受けて落ちていくのが見えた。まさか、脱出のタイミングまで見誤ることはないだろう。
高度を上げて援護に向かっているところで無線が入った。
「アクアマリン、生きてる?」
「大丈夫」
「よろしい。RTB」
格納庫の前に機体を止めてエンジンを切る。
「よっ、と」
地上に降り立つ。束の間の休息だ。
「おかえり」整備主任が迎えてくれた。「灯里は何機?」
「一機。ルーキーでした」
「へっへーん、あたしは二機ですよ晃さん」
「ほへ?」
藍華ちゃんってばいつの間に。私が一機墜としている間に……やっぱり凄い。
「機体に問題は?」
「なーし」
「こちらも大丈夫です」
「よし。後は任せな」
そう言って晃さんは散香の方に歩いていく。既に整備士たちが二機のチェックを始めていた。
本来ならこれから上司に報告に行くのだが、今回はその必要はない。なぜって、隣にいるのだから。
「藍華ちゃん凄いね。どうやったの?」
「二機がまっすぐ突っ込んできたから。受けて立った」
「うんうん」
藍華ちゃんらしい。
「すれ違いざまに一機。それでもう腰が引けてたみたいね」
……藍華ちゃんから見たらたいていのパイロットは腰抜けになっちゃうよ。
「それから?」
「楽しみは後に取っておくものさ」
続きはちょっとお酒でも飲みながら、ということらしい。
私は、夢をかなえるためにここに来た。今はただ飛ぶことが楽しい。もっと速く、もっと滑らかに、ひたすら腕を磨いていいパイロットになりたい。
そう、あの人のように。
September 23, 2007
Preparations are complete. Ready for battle. All aircraft, follow Mobius 1!
M's AC04 - 台詞資料/Mission 18 メガリス
攻撃準備完了。攻撃を開始する。全機メビウス1に続け!
というわけで早くも1か月経過してしまっているが、ひとまずTemplateの整備は完了したっぽい。気がついたらGoogle AdSenseのPicasa紹介がなくなっていたりと知らないうちにネットの世界も色々変化していた。
後はトップページやカテゴリページで記事の長さに合わせて記事の表示数を調整するくらいだろうか。実際書いてみないとどうなるのかわからない面もある。
肝心の内容はというと、今考えているSSが2本。片方はロケハンと称したちょっとした集まりも済ませてきたのだが、後で詳しく話を聞いてみたらもうちょっと話の内容に合うビールがあるっぽいのでそれも飲んでみたいところ。……なのだが、諸般の事情によりおとなしくしてる必要がありーの、でも飲んでみたいーの。
まー月1回更新できればくらいの感覚であろうか。無理は禁物。とはいえ、早く書け自分。
August 25, 2007
meifon.org 790円
VALUE DOMAINにて。
というわけで購入
↓
しばらく放置
↓
そろそろやらねばと設定
↓
ウェブ、メール開通
↓
MovableType基本設定
↓
テスト書き込み ←今ここ
↓
MT詳細設定
基本的にN/Aの設定をほぼ流用するので難しくはないはず。現状で困っていることといえばSSIを使ったテキストカウンターが共用できなさそうという点。これはドメインを取る時点で考えていなかった問題。困った。
あとは内容。コミケ後の創作意欲が一時的に高まっている状態を承知で、まあやれるのは勢いがついている今しかないだろうということでやってみた。SS用ドメインとか用意しちゃったらもう後戻りもできなかろうて。
というわけで、メインサイトとSS用サイトがそれぞれ
melfina.org
meifon.org
となる。わかる人にはわかるアレで揃えてみた。因みに、
ドメイン確保。「美鳳」は通常「Mei-Feng」なので、「Meifon」は空いていたと
というエピソードがあったりする。
この自分追い詰めモード、どうなることやら。