「クイーン、チェック・シックス!」
「見えてる。たいした腕じゃないわね。こっちは任せる」
「アクアマリン了解」
「私は上のをやる」
軽いフェイントであっさりと敵機を引き離して上昇する藍華機。同じ散香なのに違う機体みたいだ。
敵機が慌てて機首を上げる。ここは追撃不可能と判断して自分の身を守る機動に入るべき場面。
「遅い」
こちらに気付いてロールを打った次点で勝敗は決まっていた。
ファイア。
右旋回で離脱。撃ったらすぐに周囲を索敵する。いない。ここで改めてさっきの敵を確認する。主翼にダメージを受けて落ちていくのが見えた。まさか、脱出のタイミングまで見誤ることはないだろう。
高度を上げて援護に向かっているところで無線が入った。
「アクアマリン、生きてる?」
「大丈夫」
「よろしい。RTB」
格納庫の前に機体を止めてエンジンを切る。
「よっ、と」
地上に降り立つ。束の間の休息だ。
「おかえり」整備主任が迎えてくれた。「灯里は何機?」
「一機。ルーキーでした」
「へっへーん、あたしは二機ですよ晃さん」
「ほへ?」
藍華ちゃんってばいつの間に。私が一機墜としている間に……やっぱり凄い。
「機体に問題は?」
「なーし」
「こちらも大丈夫です」
「よし。後は任せな」
そう言って晃さんは散香の方に歩いていく。既に整備士たちが二機のチェックを始めていた。
本来ならこれから上司に報告に行くのだが、今回はその必要はない。なぜって、隣にいるのだから。
「藍華ちゃん凄いね。どうやったの?」
「二機がまっすぐ突っ込んできたから。受けて立った」
「うんうん」
藍華ちゃんらしい。
「すれ違いざまに一機。それでもう腰が引けてたみたいね」
……藍華ちゃんから見たらたいていのパイロットは腰抜けになっちゃうよ。
「それから?」
「楽しみは後に取っておくものさ」
続きはちょっとお酒でも飲みながら、ということらしい。
私は、夢をかなえるためにここに来た。今はただ飛ぶことが楽しい。もっと速く、もっと滑らかに、ひたすら腕を磨いていいパイロットになりたい。
そう、あの人のように。